hashabye’s diary

自動車メーカーに30年近く勤めた経験から、自動車にまつわるいろんな話や、現在治療中の病気・治療法について書いていきます

自動車:儲ける、とは。

自動車:儲ける、とは。

自動車業界は設備投資も大きいし、ノウハウが多いので参入障壁高そう、儲けるのも簡単そう、と思われるかもしれませんが、当たれば大もうけ、外れれば大損のばくち的な要素が強いです。

理由は、開発にかかる費用、設備にかかる費用(固定費。売れても売れなくてもかかるコスト)がけっこう高い点。計画台数より売れればその時点からまるまる利益になるが、計画より売れなければ固定費が回収できない。

開発にかかるお金は、あの巨大な開発センターで働く数千人単位の人たちの給料などを想像するだけでもかなり高い。

部品代などの材料費は売れなければかからないけど、開発費は売れなくてもかかってしまう。工場の人員も売れないからと言ってすぐ解雇できるわけではない。

つまり、自動車産業は「あたりはずれ」に大きく左右されるばくち的な側面が強いということ。

自分の聞いた話で今でも覚えているのが、あるエントリークラス(小さくて安い)のモデルが、廉価バージョンを出したところ、どんなに売れても価格設定上固定費をライフ(モデル導入から終了まで)で回収できないことが後からわかり、「売れば売るほど損をする」と後から語りぐさになったもの。

なので、営業は少ない台数を設定するとモデル導入自体NGになってしまうので、非現実的な多い台数を設定するとその数字にずーっと追いかけられるはめに。

「入るを量りて、以て出ずるを為す」とは昔から言われている言葉ですが、どれだけ売れるかというのは様々な科学的な方法を用いても不確定な要素が多いです。むしろ「このモデルは絶対導入したい」と多く設定したり「台数に毎日追っかけられるのはこりごり」と少なく設定したりするという恣意的な要素もあります。

なので、必然的に手っ取り早い、一台あたりの「原価低減」に走ったのが前職の例でした。

原価低減、通称「原低」についてはまた別の機会に。